一人暮らし/71〜80㎡
川崎市にある緑豊かな庭つきのマンションを購入されたH様。北欧ビンテージ家具がゆったりと配置されたリビングの秘密は、生活の機能を一手に引き受ける「バックヤード」の存在でした。40歳を前に「ライフプランが変わってもいいじゃん!」と家づくりを決断。片付けのストレスを手放し、大好きな庭いじりやインテリアをとことん楽しむ――。機能とくつろぎを両立させた、大人ならではの「私らしい」空間づくりの経緯を設計担当とともに伺いました。

——マンションを購入しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
H様:実は、明確なきっかけはないんです。ただ、なんとなく「ライフプランが見えないなぁ」という思いをずっと持っていて。そんな時、職場での担務が変わって時間や気持ちに余裕ができて、ふと「今だ!」という気持ちになったんです。ちょうど40歳を迎える年でした。 それまでは、どこか「家を買う=結婚しないことの象徴」のようにも感じていたのですが、「将来的に『売る』という選択肢もあるし、ライフプランが変わってもいいじゃん!」と吹っ切れたことが一つの大きなきっかけになりました。

▷日当たりの良さと窓から見える広々とした庭が決め手となった70平米の住まい。リビングを見渡せるオープンなカウンターキッチンが、空間にさらなる開放感を生んでいます
——最初から中古を買ってリノベーションをする想定でしたか。
H様:いえ、最初はそういうスタイルがあることを知りませんでした。ただ、新築マンションのピカピカした住まいにはあまり惹かれていなくて。たまたまあるサイトで、建築士の方がリノベーションした自邸の記事を見た時に「中古マンションもリノベーションも面白そうだな」と。 それで、庭仕事をしてみたかったこともあり、「庭付き」に絞って中古マンションを探し始めました。ところが、ほぼ1階に限られるので物件数が少ないうえに、日当たりが悪い物件も多くて「全然ない」と悟っていました(笑)。だから、ここを内見した時は、庭もあるうえに窓も大きく日当たりも良く、70平米と広々としていたのですぐに気に入りました。
▷玄関扉を開けると、室内へと誘われるように視線が抜けるレイアウト。お庭ではハーブやゴーヤなどの栽培を楽しまれています
▷高さのある窓から奥の豊かな緑が見え、まるでリゾートのような景色が日常を彩ります
——玄関扉を開けた瞬間、庭の鮮やかな緑が目に飛び込んできますね。お庭ではどんな植物を育てていらっしゃるのですか。
H様:玄関から室内へと誘われるような見通しが、とても気に入っています。庭では、ミントやパセリなどのハーブや薬味のほか、今年は夏に向けてゴーヤも育て始めました。去年はトマトやブロッコリーも収穫しましたよ。
——庭仕事はこちらに住んでから始められたのでしょうか。
H様:いいえ、コロナ禍での運動不足を解消しようと外でできる趣味を探したのがきっかけです。その頃住んでいた家の近所にあったレンタル農園を借り、アドバイザーの方に手順を教わりました。普段使わない筋肉を動かすので毎回ものすごい筋肉痛になりますが(笑)、本当に楽しくて。今回の家探しでも「庭のある物件」が第一条件でした。
——EcoDecoでご一緒したのは設計からでしたよね。
H様:はい。当初は、物件購入時にお世話になった不動産屋さんのリフォーム部門で相談と提案もいただいたのですが、自分でも探してみたくていろいろと検索しているうちにEcoDecoさんと出会いました。

▷ゆったりと休めるダブルベッドがぴったりと収まるサイズで調整した寝室。扉がないので閉塞感がありません
——EcoDecoを選んでくださった理由は?
H様:ホームページの事例紹介が大きいかもしれません。いろいろな事例があるので一概に言えないとは思うのですが、雰囲気がどこかフェミニンというか、ナチュラルな印象を受けました。
齋藤:確かに、女性一人暮らしの計画はコンスタントにある気がしますね。
——ただ、特定の層へのプロモーションはしていないですし、スタッフの押しが強くないところが良いというお声は、時々いただきますよね。
H様:たしかに、無理な営業をされない感じは良かったです。でも、やっぱり、事例紹介の影響が大きかったです。竣工写真だと、暮らしのイメージがつきにくい部分もありますが、EcoDecoさんの事例は、実際に家具が入ってそこで暮らしている様子がリアルに伝わってきたので参考になりました。

▷EcoDecoの事例から伝わる「暮らしのリアルさ」に惹かれて依頼。料理や食事をしながら正面でテレビが見える配置にもこだわりました
——ありがとうございます。リノベーションをするにあたってどのようなリクエストをされましたか。
齋藤:初回のヒアリングでは、北欧テイストを取り入れた素材感のある住まいをご希望でした。畑仕事や料理、編み物など多趣味とのことで、道具の収納や作業スペースの確保がポイントでした。特にキッチンの優先順位は高く、料理や食事をしながら正面でテレビが見えることは大切でしたね。
H様:そうですね、キッチンからの動線やテレビの見え方はこだわりました。それと、前の家でカビに悩まされたので、通気性の良さも大切にしたいポイントでした。ここは庭の窓を開ければ南北に風が抜けますし、湿気がこもらないようにクローゼットもあえて扉なしにしてもらいました。
▷長さ4mもある広々としたクローゼット。衣替えの必要がなく、通気性も抜群です
▷乾きづらいざるなども半乾きで収納できるのでオープン収納にして正解だったそうです
H様:クローゼットは長さが4mあるんです。これだけ広いと、冬服も夏服もすべてハンガーに掛けられて衣替えの必要もありません。通気性も良くなりました。
——玄関から向かって左側は、ウォークスルークローゼット→パントリー→キッチンと一本のラインでつながっているのですね。
齋藤:こちらの動線に収納をまとめています。壁面の有孔ボードはH様からリクエストをいただいたものの一つです。
H様:有孔ボードは掛けたものが一覧できるので便利ですね。メイクもここで済ませますし、ここでドライヤーもかけられるようにしています。
——洗面台以外の場所でメイクやドライヤーをするというのは新鮮です。
H様:ドライヤー後に髪の毛が部屋中に散らばるのがずっと小さなストレスだったんです。でも今は、このバックヤードの通路内で乾かすので、毛が散らばるのもその辺りだけ。そこだけサッと掃除機をかければ済むので、リビング側は常に綺麗な状態が保てて快適です。必要なモノは、全部バックヤードに一元化されて見渡せるので、整理もしやすくなりましたし、モノを捨てやすくもなりました。
▷玄関左手のスペースは、旅行の前後にスーツケースを広げる時などに大活躍。ガラスの引き戸(ミラタップ製)を閉めると部屋としても成立します
▷玄関の横には、土間からそのままアクセスできる広々とした収納場所が。大きなものもたっぷりとしまえるゆとりがあり、住まいをすっきりと保ちます
——リビング側には生活感のあるモノを置く必要がないのですね。
H様:はい、機能的に使うモノがバックヤードに集約されたことで、リビング側は散らかる要素がなくなって、飾ったりくつろいだりするだけの空間になりました。私はこの家の主役はバックヤードだと思っています。私は片付けがあまり得意なタイプではないので、家の中で「いつもきれいに片付けておく場所」と「多少ごちゃごちゃしていても目をつぶれる場所」が明確に分けられて、すごく楽になりました。
齋藤:裏動線のバックヤードだけど、奥に押し込んで閉じるのではなくて、庭の緑もテラスも感じることができる、ゆとりあるスペースとなったと思います。
H様:おかげで一番長くいる場所かもしれません。朝食はキッチンカウンターで済ませることも多く、着替え、身支度とバックヤードだけを使って出かけていきますから。それで、夜帰ってきたら、リビング側でゆっくりとくつろぐ。そんな風に使い分けています。

▷キッチンのタイルを連続させることで空間に統一感を持たせた、リビングの一部に設けたワークスペース
——ワークスペースがありますが、出社もされているのですね。
H様:週2回ほど自宅で仕事をしています。当初はしっかりとワークスペースを作る想定ではありませんでしたが、齋藤さんと打ち合わせを重ねる中で「やっぱりちゃんと設けよう」という結論になりましたが、リビングの真ん中に大きくワークスペースを作ることには抵抗がありました。
齋藤:ただ、部屋の奥まった場所に配置すると暗く、ここで過ごすだろうか…と、半分隠れるような配置をご提案しました。また、キッチンのタイルをワークスペース、洗面まで連続させることで、いくつかの用途が集まっている部分だけど、統一感がでるように考えました。

▷タイルの壁が目隠しとなり、リビング側からは見えない配置に。ふと顔を上げると庭の深緑が広がる特等席です。背後には洗面台を配置
——なるほど。タイルの壁が目隠しとなって、リビング側からはワークスペースがまったく見えません。
H様:普段は仕事の書類を沢山広げていますが、リビング側からは見えないので、散らかっていても全然気になりません。一方で、デスクに向かって仕事をしていてふと顔を上げると、視線の先には庭の深緑が広がるので、気分良く仕事ができるスペースになりました。
齋藤:ご自身は片付けが苦手だとおっしゃいますが、モノが少ないわけではないのに美しくコントロールされていて、高さを生かしたレイアウトも上手だなと思います。
H様:よかったです。ここに住んで真っ先に買ったのが5段ある大きな脚立でした(笑)。引っ越してしばらくの間はリビングにずっと置いたままにして、家具や小物の配置を試行錯誤していましたね。
——元々お持ちだった家具も多いですか。
H様:以前から持っていた家具もありますが、テレビボードやワークスペースの背面にある大きな本棚は、引っ越しのタイミングで買いました。昔からインテリアが好きで、北欧ビンテージの家具に憧れてよくビンテージのショップにも足を運んでいました。ただ、前の家の広さでは置くことが難しく、ずっと諦めていました。思い返すと、自分の好きな家具を置くことも家を購入するモチベーションの一つだったかもしれません。

▷ずっと憧れていたという北欧ビンテージの家具。ハンス・J・ウェグナーの70周年記念モデルのママベアチェアに身体を預け、お庭を眺めるのが至福の時間
——インテリアの一つ一つが素敵です。一人掛けのソファも座り心地が良さそうですね。
H様:新しく買った椅子はカール・ハンセンで統一しています。ハイバックのソファはハンス・J・ウェグナーの周年モデルです。頭を預けられて、姿勢の崩れないところがお気に入りです。休日にここに座って、お気に入りの家具や庭の緑を眺めているだけで、どこにも出かける必要性を感じないくらい快適です。ただ、最初からすべてこの方向性で決まっていたわけではなくて、この家を作りながら、いろいろと調べていくうちに、だんだんと自分の好きなものが明確になっていった気がします。
▷家づくりを通して新たな趣味になったという照明。こだわりのブラケットライトや間接照明の柔らかな光が、夜の時間を豊かに彩ります
▷ベッドルームを優しく照らす壁付けのブラケットライト。夜は間接照明の柔らかな光だけで過ごすのが、日々の贅沢なのだそうです
——家全体の照明の使い方も印象的です。
H様:これまで壁付けのブラケットライトは考えたこともありませんでしたが、リノベーションを進める中で少しずつ調べて学び、どんどん楽しくなりましたね。夜は間接照明だけで過ごすことが多いですね。「こういう贅沢があるんだなぁ」と、最近は照明が趣味になっています。
——リビングの照明は低い位置にあるのも良いですね。この広さだからこそ動線を邪魔せず配置できる気がします。

▷ルイスポールセンのペンダントライトはスマートライトに付け替え、朝と夜で調色を楽しんでいらっしゃいます
H様:ルイスポールセンのラジオハウス ペンダントは、自分でスマートライトに付け替えています。朝は白い光、夕方以降は温かみのある光に自動で調色できるようにして楽しんでいます。夜、柔らかい光に包まれて過ごしていると本当に癒されます。
齋藤:夜になってカーテンを閉めると、白い生地に光が拡散してさらに雰囲気が変わりそうです。

▷キッチンサイドのバーを設置した収納。リモコンや読みかけの雑誌などを置くのに便利で、ダイニングテーブルはきれいな状態を保てる
——改めてリノベーションを振り返ってみていかがでしたか。
H様:本当に楽しかったです。打ち合わせ期間も含めて、滅多にできない大きなモノづくりというか、大規模な趣味を楽しんでいるような感覚でした。
齋藤:H様のように30代後半から40〜50代の女性のリノベーションを担当させていただく機会は増えています。ご自身のライフスタイルや価値観は確立されているけれど、改めて振り返ってみたり、憧れを実現したり、プロジェクト自体を楽しんでいただけるように感じます。
▷毎日の身支度も快適に過ごせる洗面台。グレーの洗面ボウルはT-formのもの
▷ランドリースペースは、家事動線を考えて浴室の正面配置しています
▷シンプルにしつつグレーの塗装やペンダントライトなど細かなこだわりを感じるトイレ
▷解体すると内側に出っ張っていた元・お風呂の窓。「こういう偶然が楽しい。屋根裏部屋を見つけた感覚!」と、ディスプレイを楽しんでいらっしゃいます
H様:リノベーションの良さの一つは、自分の好きを追求できることですよね。齋藤さんとやりとりをする中で「私は何をしたいのか」をたくさん引き出してもらった気がします。「私はこういうのが好きなんだな」と気づいて調べていくうちに、また新たな扉が開いていく、そのプロセスもとても大切だったように思います。たぶん20代の頃にリノベーションをしていたら、今の部屋にはならなかったですね。生活スタイルや生き方が確立してきた世代や、プロセスを楽しめる方には、こんなに楽しいことはないんじゃないかと思います。だって、自分の生き方を自分で作れるんですよ。家具の配置とかインテリアといった表面的な見せ方だけじゃなくて、自分が朝起きてから夜寝るまでどんな風に動きたいか、どこに家事のストレスを感じるか。そんな生活の振る舞いも含めた「生き方の価値観」をかたちにしていけるのは、本当におもしろい経験でした。
——共感する方も多いと思います。本日はありがとうございました。
生活感のある機能をバックヤードへ集約したことで、お気に入りの北欧家具や庭の緑に囲まれた美しいリビングを実現されたH様。ライフスタイルや「好き」の価値観が確立された大人世代だからこそ、家づくりというプロジェクトを心から楽しんでくださり、自分らしさをかたちにできたのだなと感じた取材でした。
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