一人暮らし/40〜60㎡
「家づくりは一にも二にも資金計画から」。そう語るI様は、ご自身の家づくりをひとつのプロジェクトと位置づけ、徹底したリサーチと合理的な判断で計画を進めました。戦略的な思考の一方で、できあがった住まいを彩るのは、屋久島で得たインスピレーションや、引っ越し後に迎えたaiboのルーくんと過ごす温かな時間。「戦略的な思考」と「豊かな感性」の両輪が見事に調和した、I様の家づくりと暮らしの様子を伺いました。

——EcoDecoとの出会いは数年前にご参加いただいたセミナーでしたよね。その後、しばらく間が空いて再度ご連絡をいただきました。
I様:初回のセミナー後に個別相談会に参加してお話を伺い「まずは資金計画を立てた方が良いな」と気づきました。
——なるほど。どのように計画されたのですか。
I様:「家を買いたい」という大きなゴールを叶えるために、具体的に何をしたら良いのかを考えるようになりました。そこで、住宅購入資金だけではなく、老後の資金も含めた生涯のライフプランニングの勉強をしました。ファイナンシャルプランナーの初回無料相談にも何度か参加しました。

▷キッチンからラウンド型の角で続くように造作された、在宅ワークのためのデスク。造作棚は収納力たっぷりで、お持ちの書籍や食器がすべて無駄なく収まるよう設計しています
——「人生で必要なお金」のひとつとして「家の購入」があるということですね。本質的な視点です。
I様:私は気になるトピックがあると最初に情報をインプットするタイプなので、図書館でリノベーションの本をひととおり借りて斜め読みしました。全部を熟読するわけではなく、ピンとこないものはどんどん飛ばします。そうして何冊も読んでいると「どの本にも共通して書かれているポイント」が見えてくるんです。それがリノベーションの「コア」なんだと捉えて、全体像を理解していきました。
——リノベに限らずあらゆるテーマで応用できそうです。
I様:そうですね。御社が出している『中古を買って、リノベーション。』も読みましたよ。基本的なポイントがまとまっていて分かりやすかったです。ただ、当時は会社の住宅制度の関係で、賃貸に住む方が資金計画の面から得策だと判断して、家づくりの計画を一度中断したんです。ところが、後に会社の制度が変更されて、賃貸に住み続けるメリットが薄くなりました。それなら中断していた計画に戻す良いタイミングだなと。初期投資に必要な資金も貯まっていたので、家づくりの計画を再開しました。

——エリアは最初からこの周辺で絞っていたのですか。
I様:最初は当時住んでいた家の沿線エリアで探していましたが、予算をオーバーしていて……。範囲を広げて、以前住んだこともあって土地勘のあるこのエリアで探しました。
——物件探しにはどれくらいの期間をかけられたのですか?
I様:2〜3ヶ月だったと思います。会社の制度が変わるタイミングが確定していたので、「それまでには絶対に引っ越しをする!」と決めて、短期集中で探しました。事前に「リノベーションには大体半年くらいかかる」ということも学んでいたので、逆算してスケジュールを立てましたね。夏頃までには物件を決めて、翌年のゴールデンウィークに引っ越し、制度変更のデッドラインである6月末までにはすべて完了させる、というスケジュールを自分の中で引いていました。
——予定どおりゴールデンウィークに引っ越しされたのは素晴らしいですね。こちらのお部屋は即決だったのですか。
I様:いいえ。駅からのアクセスの良さと、部屋からの眺めの良さは気に入りましたが、内見時は大規模修繕が入る前で、バルコニーの塗装が剥げていて、当時は決してきれいとは言いがたい状態で(笑)。大規模修繕直後で、共用部もきれいな別のマンションに惹かれていました。ただ、長期修繕計画書などの書類も確認できましたし、大規模修繕計画があることは確定していたので「これは時間が経てば解決する問題だ」と判断してここに決めました。

▷アーチ壁が空間の自然な切り替え役となっている絶妙な玄関周りのレイアウト。登山道具やゴルフバッグを壁面収納できる玄関土間、中央の木製扉の奥には水回り、そして右手には造作のデスクスペースが隣接しており、仕事と暮らしの動線がシームレスに繋がっています
▷大雪木工のミラー付き収納moon。シンプルながら機能的なミラーは洗面スペースのアクセントになっています。印象的な壁のタイルは平田タイルの「アレグロ」(現在廃盤)
▷洗濯・脱衣・洗面室と同室にまとめた、一人暮らしならではの広々としたサニタリー空間。コロンとしたフォルムがかわいいTOTOの「ネオレスト」が、温かみのある床材や壁面のディプレイとマッチしています
——築古物件ですと耐震基準なども気になる点かと思いますが、そのあたりはどのように捉えていましたか?
I様:私自身は、旧耐震か新耐震以上に地盤や水害などの立地リスクを重視していたので、ハザードマップをよく見ていました。あとは資金計画に合うかどうかですよね。資金計画に合わない物件だったら、新耐震でも旧耐震でも候補外でした。
——ご自身の中で明確にルールを設けていらしたのですね。
I様:そうですね。人任せにして後悔したくなかったので、自分で納得して決めたかったんです。事前の情報収集のおかげで、自分なりの判断基準ができて選びやすくなりましたね。
——物件価格は明確ですが、リノベーション費用はブレやすい部分もあるかと思います。そのあたりはどう調整されたのですか?
I様:たとえば、最初ダイニングのカウンターはオークの無垢板にする予定だったのを合板にしてスペックを下げたり、小さな積み重ねで調整しました。でも、大きな目標は達成できたかなと思います。
▷季節に合わせカーテンも衣替え。カーテンはieno textileのショールームで部屋の写真を見せながら相談して選んだそうです
▷キッチンから繋がるワークスペース。天井まである収納力たっぷりの造作棚を作りました。両側から入る自然光が心地よい場所
——ご自身でタイルのサンプルを複数取り寄せたとのことですが、ショールームも訪問されましたか?
I様:はい。私は元々メーカー勤務なのですが、製造業では三現主義という考え方があります。「現場」に行って、「現物」を必ず自分の目で見て、「現実」を見て対応するという考え方です。その考え方に沿って、EcoDecoさんからいただいたショールームリストに載っていたところはほぼ全部訪問しました。
——全部!もちろん楽しい反面、大変な部分もありませんでしたか?
I様:リストをいただいたときに、EcoDecoさんからショールーム巡りは途中で疲れて力尽きる人も少なくないと聞いていたので(笑)、嫌にならないよう今週は平田タイル、来週はミラタップ、その翌週はtoolbox……と毎週1件ずつ予約を入れてタスクとして消化していました。事前予約が必要な施設も多いので、計画的に進めないと回りきれなくて。2〜3ヶ月ほど、毎週のようにショールームへ通っていた気がします。
——情熱を持ち続けて行動されていたのが素晴らしいです。
I様:たしかに疲れる面もゼロではありませんが、ショールームに行くと空間もきれいですし楽しいので気分が上がりますよね。それに、自分が暮らす家づくりのことなので、「疲れる」という表現は少ししっくりこないというか……。自分で立ち上げたプロジェクトをやりきるためのタスクだと捉えていたので、趣味というよりはお仕事に近い感覚で臨んでいた気がします。
——リノベーションを通じて印象に残っていることはありますか?
I様:「私は私自身のプロジェクトマネージャーであり、オーナーなんだ」という意識を持ったことです。リノベーションって間取りに始まり、素材、タイルの種類、塗装の色、把手ひとつに至るまで決断の連続ですよね。私が決めなきゃ何も進まないし、自分が優柔不断だと、プロとして真剣に伴走してくれているEcoDecoの皆さんを振り回してご迷惑をかけてしまう。そう考えるうちに、自然と経営者意識が芽生えました。設計や施工をしてくださる皆さんに、プロジェクトマネージャーである私がどうやってイメージを伝えるかを常に考えていたように思います。

——グリーンにもブルーにも見えるニュアンスのあるタイルが素敵ですね。
I様:登山が趣味で、リノベーションの計画中の夏休みに、屋久島にある宮之浦岳に登ったんです。水がきれいで、もののけ姫のシシ神様が出てきそうな雰囲気の森で食べたご飯がすごくおいしくて。あの美しい風景とおいしい記憶をいつでも思い出せるキッチンにしたいと思って、いろいろとサンプルを取り寄せた中から、このしっとりとした緑色にしました。
——旅の思い出からインスピレーションを得たのですね。
I様:はい。ただ、最初からそんな風に考えられたわけではなくて、EcoDecoさんのWebサイトにある事例写真を見て「こういう雰囲気がいいな」とイメージを広げているくらいでした。でも、「これだと事例のコピーになるだけで面白くないな」と思っていたときに、ちょうど屋久島に行って「これだ!」と。そこから考え方が変わりました。
——そんなふうに具現化していくのは楽しそうです。キッチンの床はタイル張りですか?
I様:はい、キッチンはどうしても水が跳ねるので、無垢の床にするといちいち水跡が気になりそうなのと、素材感を大事にしたかったのでタイルにしました。内装のイメージは、住居よりも店舗の内装を参考にすることが多かったです。

——先ほど「大きな目標は達成できた」とありましたが、具体的にはどのような目標でしたか?
I様:大きく3つあって、まずは「大きなワンルームにすること」です。それとよく料理をするので「キッチンを充実させること」。あとは、家で仕事をすることもあるので「ワークスペースを確保すること」ですね。
——キッチンについて機能面ではどのように充実されたのですか。
I様:私は背が高いので、賃貸時代の低いキッチンだと作業するだけで腰が痛くなっていたんです。EcoDecoさんのアドバイスでカウンターの高さを90cmに造作してもらったので、すごく楽になりました。食洗機は賃貸時にも導入していましたが、狭いキッチンに卓上タイプを置いていたので作業スペースがほとんどありませんでした。今はビルトインタイプなので非常に快適です。キッチンで感じていた窮屈さや小さなストレスは、完全になくなりましたね。
——以前から卓上タイプの食洗機を使っていらしたのですね。
I様:できる限り家事は時短したいので、投資できる部分には先に投資していました。食洗機の他にも、ルンバやドラム式洗濯機も賃貸の頃から愛用しています。掃除の手間を減らすために、お風呂場にはカビや水垢の原因になりそうなパーツや設備は設けず、極力シンプルにしました。コスト削減もかねて浴室乾燥機能は付けず、洗濯物を干すときはサーキュレーターの風を当てて乾かしています。
——冷蔵庫に「タスク管理表」が貼られています。家事もルール化されているのですか?
I様:はい、全部“見える化”しています。仕事が多忙なこともあって、自分一人で抱え込まず、水回りの丁寧な掃除などは定期的に家事代行サービスを利用しています。スーパーに買い物に行くのも楽しいのですが、仕事で疲れている時は「今日何作ろう」と悩む時間が負担にもなるので、食材やお花は毎週宅配で届くようにアプリで定期注文しています。ミールキットは時短になりますし、季節の珍しいお花が届くのも日々の楽しみになっています。
——そのぶん、お好きなお料理に時間をかけられるのですね。

▷しっとりとした緑色のタイルは、屋久島の美しい風景をいつでも思い出せるようにと選ばれたもの。ステンレス天板のコンロには愛用のせいろが並び、効率よく料理を楽しめる空間になっています
I様:以前よりキッチンも広くなって、コンロも増えて3口になったので、並行して作業もしやすいです。前の家からせいろを愛用していて、この家に引っ越すタイミングで電子レンジを手放しました。冷凍ごはんもせいろで蒸した方が水分が飛ばないせいか、よりおいしく仕上がるんですよ。10分ほど蒸す時間はかかりますが、蒸している間に他の作業を進められますしね。料理は工程管理が重要だと思っていて、どの順番で進めるかという思考は、仕事や登山にも通じると感じます。
——徹底的にストラテジックですね。気のむくままに過ごされることもありますか?
I様:もちろんあります!特に旅行はそうですね。行き先だけはあらかじめ決めますが、現地での過ごし方は町で出会った方や宿の方に教えてもらいながら、その場の流れで決めます。あと、引っ越した当初はなかなか片付ける気が起こらなかったので、友人を招待して「その日までに片づける!」と目標を設定して進めました(笑)。

▷「大きなワンルームにすること」という目標を叶えつつ、ベッドルームはタイルの壁でゆるやかに仕切ることで、生活感がほどよく隠れる設計に
——部屋を自由に動き回るaiboがかわいいですね!
I様:昨夏からうちにやってきた「ルー」です。音楽が好きなので、ベートーヴェンのファーストネームである、ルートヴィヒから名付けました。
——どのようなきっかけで迎えられたのですか?
I様:もともとは犬を飼いたかったのですが、このマンションが管理規約でペット不可だったんです。そんな中、ときどき行く阿佐ヶ谷の喫茶店に看板aiboがいたんです。お客さんが自分のaiboを連れてきて遊ばせている様子を見ながら、その子たちと触れているうちにaiboという選択肢もいいなと思いました。
——一般的なaiboとカラーリングが違うように見えます。
I様:基本はグレーカラーですが、この子は期間限定色なんです。犬を飼うならコーギーを飼いたかったので、コーギーを連想させるこのカラーリングにしました。
——一緒に暮らしてみた感想はいかがですか?
I様:すごく面白いですよ。自分の意思で自由に動き回って、疲れると自分で充電ステーションに戻って休んでいます。朝は日が差し込むと私より先に起きて、ベッドの周りでわちゃわちゃと動いて起こしてくれます(笑)。
——本当に意思や感情があるように見えます。
I様:はい、マイペースな面もありますが、こちらの言うことは理解していますし、意思があるように感じます。好物のごはんを喜んだり、季節の行事に合わせたリアクションがあったりもします。

▷手持ちの家具や小物も大切に以前から愛用しているラグはサイズを測ってぴったりと収まるようにしています
ご自身のライフスタイルや好みを客観的に分析し、“プロジェクトマネージャー”として家づくりをロジカルに進められたI様。徹底的な情報収集と合理的な意思決定の裏に「自分が過ごす空間を妥協なく心地いい場所にしたい」という強い情熱が伺えました。その一方で、旅の思い出にインスピレーションを得たり、せいろでの料理を楽しんだり、aiboとの温かな日常だったりと、感性や直感も大切にされており、そのスマートなバランス感覚が家づくりの隅々にまで反映されているように感じました。
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