ファミリー/61〜70㎡
ー いつ頃からリノベーションを考えていらしたんですか?
奥様:今3歳の長男が生まれた頃から考えてはいたんですが、「いい物件があったら引っ越したいね」くらいにのんびりと構えていて。「ゆっくりでいいので」とEcoDecoさんにお願いして物件を探してもらっていました。
ー エリアや物件にはどんなご希望がありましたか?
奥様:葛西近辺を希望していました。以前からこのあたりに住んでいて親しみがありましたし、すごく住みやすいので、エリアは変えたくなかったですね。
ー どういう部分が住みやすくて気に入っていらしたんですか?
奥様:江戸川区は、子供の教育費の補助金制度や児童手当が充実していて、子育て世代を大切にしてくれている感じがします。葛西エリアは、近くに公園もたくさんありますし、ショッピングセンターもあるので必要な物が生活圏内で買えるのは便利ですね。
ー リノベーション以外は考えていなかったんでしょうか?
渡辺さん:実は新築マンションも建売住宅も見に行きました(笑)。
ー ご自身で戸建を建てるんんじゃなくて、新築マンションなんですね(笑)
奥様:この近辺は新築マンションも次々と建っているんですが、一度も見に行ったことがなかったので内見してみたくて。
渡辺さん:わかってはいましたが、新築マンションでは私たちが希望しているような間取りや内装の仕上げの物件はなかったですね。
奥様:「○LDK」の数字を多くするための間取りというか…、個室が多くてひと部屋ずつがコンパクトだったので「私たちには合わないね」という結論に至りました。
ー 渡辺さんが希望されていたのはどういう物件だったんですか?
奥様:譲れなかったのは日当たりと風抜けです。最初はバルコニーは広めがいいとか、北向きはNGとかいろいろな条件があったんですが、何度か内見をするうちに絞られていきました。
天井:担当スタッフだけじゃなくて、途中から皆で渡辺さんに合いそうな物件を探していました(笑)。葛西から少し離れたエリアで、条件も合って価格もここより少し安い物件をご紹介したこともありましたよね。
渡辺さん:船堀ですよね。でも、妻が「ここだと友達の家から遠くなる」って(笑)。
奥様:そうそう(笑)。友達と気軽に会えない距離になるのはさみしかったので。「そこ重要?」と主人に突っ込まれながらも、以前住んでいた家からは、あまり離れないエリアでゆっくり探していました。
天井:日当たりと風抜けを大事にされているお話は伺っていたので、この物件を見つけた時は「角部屋だし風も抜けそうで、渡辺さんにぴったりじゃない?」とすぐにご紹介したのを覚えています。
ー ここに決めたのはまさにその二つが叶うからですか?
奥様:はい、バルコニーが南向きなのもよかったですね。玄関の隣の北側にも小さなバルコニーがあるので、網戸にして開けておくと、南北の風通しがすごくいいんです。真夏以外はほとんどエアコンを使っていませんが、快適ですよ。
ー いろいろな建築家さんとお仕事をされている中で、芦沢啓治建築設計事務所に依頼されたのはなぜですか?
渡辺さん:一番古くからの付き合いだからです。私が独立する前、まだ建築のことを何も分かっていなかった頃から一緒にお仕事をさせてもらっています。
ー 芦沢さんの仕事に対する信頼の証ですね。不動産仲介にはEcoDecoを選んでくださったのもうれしかったです。芦沢さんの設計でお好きなのはどういうところですか?
渡辺さん:造りがゆったりとしていて、デザインがさっぱりとしているところですね。
ー どんな家にしたいとリクエストされたんでしょうか?
奥様:リビングを広くしたいとか、水回りを玄関側に移動させたいとか、そういう間取りの要望を伝えたくらいで、基本的には芦沢さんの提案にお任せしました。ファーストプランを見た時は、私には少しスタイリッシュすぎるようにも思えたんですが、主人に「大丈夫、任せたほうがいい」と言われ、お任せすることにしました。
渡辺さん:芦沢さんが設計した家を今までにいくつも施工してきたので、デザインに不安はありませんでした。ですから、大きな要望だけを伝えてあとはお任せ。細かい部分は実際に現場で施工しながら相談して進めていきました。
ー 水周りを移動されたのは奥様のご希望ですか?
奥様:そうですね。玄関を入ってすぐのスペースは、もともとは個室だったんですが、通路に面して窓があるので、ここに水周りを設ければ、風通しもよくていいかなと思いました。それと、もしここを子供部屋すると、成長した時に玄関からすぐに部屋にこもってしまう可能性もあるので、子供部屋はリビングの近くにしたかったんです。
ー 子供部屋はリビングと隣接していますが、ある程度プライベートも確保できそうですね。
▷子供部屋にはデスクスペースも造作した。今はここでドリルをしているそう。
奥様:ふだんは開けっ放しにしていますが、引き戸で閉められますし、窓にはスクリーンを下ろすことができるので、気配は感じられつつも個室として十分機能しますね。今は、客間として使うこともあります。
ご主人:水周りを移動させるのに、この部屋はいじりやすいかたちをしていたのもよかったです。
ー いじりやすいというのはどういうことですか?
渡辺さん:浴室には排水管の勾配が必要なので、移動させるためには床を上げなくてはいけないのですが、建物が床を上げることも想定して建てられていたんです。だから天井も高くて、リノベーション向きの物件でしたね。
ー キッチンの使い勝手はいかがですか?
奥様:使いやすくて一番のお気に入りです。収納を多くしたいと伝えていたので、持っている食器の数や大きさまで細かくヒアリングしてくれて、背の高いグラスや小さなお皿もきれいに収まるよう設計してくださいました。他には、キッチンとリビングをつなげたいというお話をしていたら、「キッチンを一段下げれば、ダイニングテーブルとキッチンカウンターの高さが揃っていいよ」と提案してくれました。
渡辺さん:私からはキッチンは全部造作にしたいと伝えました。
ー この立派なキッチンは施工のプロである渡辺さんの自邸ならではですよね。
渡辺さん:扉に使った木は、実は一枚板ではないんですが、木目をきちんと揃えて一体感があるように仕上げました。
ー 細やかなお仕事ぶりが伝わってきます。
渡辺さん:自分の家に限らず、仕事をする時はいつも「自分が住んで嫌な家にはしたくない」と思って施工しています。たとえば、引き戸を全開にした時に、扉の角とレールの端をぴたっと揃える。少しレールがはみ出していても使う分には不都合はありませんし、普通の人はそこまで見ていないので気付かないと思いますが、自分が見た時に美しくないですからね。
ー おっしゃる通り、本当に美しいキッチンです。収納力もたっぷりあって使いやすそうですね。
奥様:炊飯器やゴミ箱も収納できるので、必要最低限のものしか外には出していません。シンクが全部スクエアで、排水溝周りのパーツも取り外しやすいので、お手入れがしやすいのも気に入っています。キッチンカウンター下の収納はリビング側にもあって、こちらは本棚として使っています。
渡辺さん:リビング側の収納にはDVDレコーダーも入っているんです。レコーダーのコード類を床下に通して配線しているので、TV台がないのもポイントです。
ー だからすっきりしているんですね!
渡辺さん:キッチンカウンターは、収納はいろいろな深さになっていますし、ダイニングテーブルともつながっているので、シンプルに見えて作りは複雑なんですよ。
ー 以前の事例でもありましたが、シンプルに見えるお宅こそ、手間がかかっているんですよね。
渡辺さん:そうだと思います。
ー 先ほど芦沢さんのデザインはゆったりしていると仰っていましたが、浴室も洗面室も広々としていますね。
奥様:当初の打ち合わせでは浴室、洗面室の先に、土間を作るという案もあったんですが、図面に落とすと狭くなることがわかったので、土間は北側のバルコニー部分に設けて、そのぶん主寝室のスペースを削りました。
ー 玄関側に土間を作ると通気性もよくていいですね。
奥様:はい。代わりに寝室が狭くなったんですが、寝るだけのスペースなのでシンプルでいいかなと割り切りました。マットレスを全面に敷いているので、子供の友達が遊びにくるとトランポリン代わりにして遊んでいます(笑)。
▷左奥のディスプレイ棚の前の天井についている2つの丸い穴が、部屋干し用ポールの取り付け金具です。
ー 自邸ゆえに大変だったことはありますか?
渡辺さん:時間がかかってしまったことですね。
ー それはお仕事を優先してということですか?
渡辺さん:そうですね。ここに入る予定だった職人さんを「やっぱり今日は依頼を受けている現場に行ってもらおう」ということも何度かありました。通常、施工期間は2ヶ月くらいですが、結局半年くらいかかってしまいました。
奥様:自分の家は後回しになっちゃうんですよね。ベランダのデッキパネルがまだ全面に貼れていなかったり、まだ完成していない部分もあります。(笑)。でも、住みながら不都合が出てきたら作り足せばいいかなって。リビングに付けた部屋干し用のポールも竣工当初はなかったんですよ。
渡辺さん:妻が実家に里帰りをしている時に、自分で洗濯をしていたら、雨が降って外に干せないことがあったんです。それがきっかけで後から付けました。
奥様:浴室乾燥もあるんですけど全部を干すわけにもいかないですし、せっかく風通しのいいリビングなのでここにあるといいよねという話になって。そうやってすぐに直せるのは助かりますね。
ー お話を伺っていて満足感が伝わってくるのですが、今だから言えるような設計の提案はありましたか?
渡辺さん:コンクリートブロックは図面を見た段階ではやりたくなかったですね(笑)。まず運ぶのが大変ですし…。
ー その理由は渡辺さんならではですね(笑)
奥様:私も室内にブロックを積み上げるというのが、全然イメージが湧かなくて。最初は不安もあったんですが、やってみたらかっこよくなりました。
渡辺さん:ブロックをそのまま重ねるだけでは表面がポロポロと崩れてくるので、塗料を塗って膜をつけてあります。
奥様:これだけのブロック全てに塗膜をするのは大変そうでしたが、おかげで濃いグレーがホワイト寄りになって色味も明るくなりました。納戸やトイレの扉が薄いグレーで、床がブラウンなので、相性がよくなったというか。
渡辺さん:あと、ブロックにしてよかったのが、猫がここで爪を研ぐようになって爪研ぎがいらなくなったことです(笑)。
奥様:賃貸マンションに住んでいた時には猫が壁紙をボロボロにすることがあったんですが、ここに引っ越してからは、必ずここで研いでいますね。
ー 思いがけないメリットもあったんですね(笑)。素材のつながりで伺いますが、水周りの床材がユニークですよね。
渡辺さん:ボロン(BOLON)という塩ビを織り込んだ床材です。水分やゴミが入り込みづらいので水周りにいいですよ。
奥様:トイレと脱衣所は同じボロンにしました。さっと拭けて綺麗になるので衛生的ですね。
ー 素足で歩いても気持ちがいいですよね。
※BOLONはEcoDecoのお客様でもここ3年ほどで増えている人気の素材です。
ー これまでに手掛けたお宅を参考に、自邸にも取り入れたことはありますか?
渡辺さん:フローリングとか、素材に関しては取り入れた部分がいくつかありますね。リビングダイニングの床はオークを少し白く塗ってあります。照明はFLOS(フロス)のグローボールです。お客様の家にも取り付けたことがあって、うちにも採用しました。
奥様:カッシーナでフロアスタンド型のものを見て、「これのペンダント型をつけるから、イメージを湧かせて」と言われたのを覚えています(笑)。
渡辺さん:逆に、お客様の家ではできませんが、自分の家ならできたこともあります。
ー へー!どのあたりでしょうか?
渡辺さん:共用部の排水の通気弁をカットしました。どの建物もそうなんですが、トイレやお風呂の水を流すと、一緒に空気も流れてしまうので、空気を入れるための通気弁が必要なんですね。ただ、この部屋は構造上切ってしまっても問題ないと判断して切ってしまいました。そうすることで部屋を横断する配管が1本減ってすっきりしました。
ー なるほど。必要なら元にも戻せますし、ご自邸だからこそ可能だった判断ですね。今後はどのような暮らしをしたいですか。
奥様:今はこの作りで満足しています。将来的には子供部屋に二段ベッドを置くのもいいですし、子供の成長に合わせて、必要になったらその都度、自分たちで作り足しながら住み続けていきたいです。
「リノベのプロの家」にお邪魔するということで「どんなこだわりが詰まっているんだろう」と思っていたら、大枠の希望だけを伝え、使う素材や細かいデザインは設計士さんにお任せ。ちょっと意外な気もしましたが、日頃から一緒に仕事をする設計士さんへの信頼や敬意があるからこその“お任せ”なんだと感じました。一方、これまでに手がけた事例のよかった部分を取り入れたり、よりきれいに見えるよう扉の木目を合わせたりと、施工のプロの自邸ならではのこだわりもたくさん。美しい仕事をされる方々と共にEcoDecoがあることをあらためて誇らしく思った訪問でした。
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